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*卒論着手をきっかけに2017年に執筆した論考を久しぶりに掘り起こして投稿しています。

論点:加山又造の《天の川 (The Milky Way)》の構図は日本から見た秋の天の川の構図と照らし合わせると面白いものが見えてくる!

分析した作品:加山又造《天の川 (The Milky Way)》1968年、絹本彩色、六曲一双、各167x365cm

Reference: https://livedoor.blogimg.jp/masuzawa05/imgs/2/5/25ce2b21.jpg

 芸術家は<表現者タイプ>と<伝達者タイプ>の2つに大きく区分できると私は考えている。現代では、前者を-メッセージ性の強い作品を生み出す-<クリエイター>と、後者を-美と機能を需要者に発信する-<デザイナー>と呼称する事が多い。加山又造は日本の伝統美に革新を齎したクリエイティブな芸術家であるが、2つのタイプのどちらかに分類するのであれば<デザイナー>タイプであると、数百点に上る彼の絵画、版画、陶芸品、和装品、宝飾品を観察していて感じた。

 「おやじがやっていたこと(中略)人を美しくするってのは大変な文化だと思うんです。それが自分の信念というか観念であるわけです。(1)」西陣の装飾図案家であった父親についてそう語る加山の姿は物腰が柔らかく、口角はキュッと上がり目をキラキラさせている。加山の初期の作品は戦後間もない時代にアルバイトをしながら描かれたものであることから定説では「暗く、悲しい」と評価されているが、私はどうしてもそう感じることが出来ない。もちろん、中期の豪華絢爛な《千羽鶴》と比べれば画材が違うことから色合いがダークトーンになりがちだが最初期の《移住》の伸び伸びとした色使いとリズミカルな造形からは、素直な性格とコンポジションのセンスが感じ取れる。また《駈ける》からは、時の流れを繊細に感じ取る能力と、それを勢い極まる映像的な表現で観者に伝えられる力量が伺える。従って既に1950年代から加山のデザインセンスは開花していたと言え、琳派の作風の研究によってそのデザインセンスは更なる飛躍を遂げ、革新的な装飾性を持つ屏風絵へと昇華された。

 今回、東京国立近代美術館で私が約30分観察し続けたのは《天の川》である。同館1階に展示されている《千羽鶴》が写真撮影可能である一方で最上階に展示されている《天の川》が撮影不可なのは、これが目当ての来館者が多いからだろうか。本作は六曲一双屏風だが、加山は常々屏風が半双だけ、もしくは部分的に折りたたまれていても成立するような有機的な画面になるように工夫していたという。本作も例外ではなく、例え部分的に折り曲げられていても充分見応えのある作品であり、私はあまりに一折一折に目を凝らした余りに何度もメガネや額を展示ガラスにぶつけてしまった。

 《天の川》が表す季節は初秋である。万葉集に於いて秋の七草とされる桔梗、女郎花、ススキが草原に配され、それらの間で10匹のキリギリスと3匹のコオロギが音を奏でている。形態から種別は近畿地方より西に生息するニシキリギリスと日本で最も一般的なエンマコオロギだと推測できる。本作で最も印象的なのは、《風神雷神図屏風》の風神雷神、もしくは《紅白梅図屏風》の梅の木のように配された太陽と月と、その間を繋ぐように描かれた天の川の水紋である。日本から見ると、夏の天の川が天頂から南の地平線に向かって滝のように流れているのに対し、秋の天の川は西から北東に流れ、屏風の左から右下に流れる水紋と形が一致している。また秋の天の川でとりわけ眩しい西側にあるデネブと東側にあるペルセウス座α星が本作の月と太陽の位置にあるのが興味深い。また、《天の川》の水紋の中央に配されているM字曲線は秋の天の川の中央に観測できるカシオペア座だと推測できる。恐らく加山は実際に天体観測を行ってこの構図を考えたのではないだろうか。下弦の月と太陽が同時に見られる時間帯は明け方であるため、何か新しい事が始まる予感が込められた作品だと感じる。科学的な根拠からだけではなく、屏風の構図を見ても、太陽が昇っている右側の空間の方が開けており、左手の2層の装飾に比べて右手は装飾が4層になっているため、自然と目線は太陽の方向に集中する。月光を愛す加山が中秋の名月を連想させる<秋>をテーマに描いた屏風にも関わらず、太陽に意識が向くとは、くすぐったい感覚である。

 実際にこの作品が描かれた1968年をターニングポイントに、加山は装飾美を益々極める波に乗り始めたように伺える。光琳へのオマージュである《梅》を描いた同年に加山のトレードマークとも言える<宇宙の流れを表すような>水紋が屏風に表れ始める。1965年の《夏冬山水》の波濤がそれだが、まだこの時点では洗練されておらず、1967年に描かれた《雪月花》と《初月屏風》で霜柱や箔押しを含んだ水紋の形態が完成する。

【参考文献】

(1) toritome nine、 「日本画家 加山又造」(NHK 「あの人に会いたい 加山又造」)、 

入手先<https://www.youtube.com/watch?v=yiPTKjaTeFU&t=15s> 入手日2017-11-07

弦田平八郎、「アート・ギャラリー・ジャパン 20世紀日本の美術 全18巻 10 加山又造/横山操」、株式会社集英社、1986年

加山又造・前本ゆふ、「加山又造素描 ゆふ」、中央公論社、1990年

加山又造・岩崎吉一、「現代の日本画[11] 加山又造」、株式会社学習研究社、1991年

多摩美術大学美術館・他、「加山又造 アトリエの記憶」、多摩美術大学美術館、2005年

加山又造共同研究、「加山又造 アトリエの記憶II」、多摩美術大学美術館、2007年

加山由起・他、「加山又造 アトリエの記憶III」、多摩美術大学美術館、2008年

加山又造、「加山又造全版画集1955-2003」、阿部出版株式会社、2009年

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